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【国産トビケラ幼虫 各科への検索】

 以下に国産トビケラ幼虫の科レベルの検索図を示します。トビケラは他の水生昆虫に比べて科の数が多く、同定にあたって難しさ・とっつきにくさを感じやすいグループかもしれません。しかし、既存の書籍の情報を整理・再検討して、非専門家でも可能な限り簡単にトビケラを見分けられるように心がけて検索図を作成しました。野外観察等でお役立てください。

※本検索図は国内種の同定を想定して作っています。海外種には適用できないため、その点はご留意ください。

はじめに知ってほしいこと・アドバイス

巣・幼虫本体の両方の情報がきわめて重要です。トビケラの幼虫ははほとんどの種が巣を作ります。巣のタイプは「固着巣」と「可携巣」の2つに大別されるのですが、この

 うち可携巣をもつものは通常、巣ごと採集されます。トビケラはグループごとに巣の材料や巣の形が厳密に決まっているため、巣に関する情報は同定の際に大いに役立ちま

 す。幼虫の中には刺激やストレスを感知すると巣から出てしまうものがいるため、種類の異なる複数のトビケラをひとつの容器に入れっぱなしにしておくと、どの幼虫がど

 の巣に入っていたか分からなくなってしまいます(1つのサンプルの中に複数のトビケラが混在している環境調査の液浸標本サンプルなども同様)。「幼虫はそっくりだけ

 ど巣がまるで違う」トビケラもいれば、逆に「巣は似ているのに幼虫が全く違う」トビケラもいるため、巣と幼虫本体との両方を明らかにしておくのが、トビケラ幼虫同定

 の秘訣です。

しばしば解体・破損を伴うため、1種につき複数のサンプルがあるとよいです。トビケラの幼虫は、巣や幼虫の色彩などに特徴があって肉眼でも十分に同定が可能なもの(割

 合としてごく一部)を除き、エタノール等で固定した後に顕微鏡で細部を観察して同定を行うことが前提となります。そして同定キーの中には脚を切ったり頭をちったり

 しないと観察しにくいものも含まれます。加えて幼虫をきれいに巣から出すのが難しいグループもあり、観察をはじめる時点でサンプルが損傷していることは日常茶飯事で

 す。もしサンプル数に余裕がある場合には、解体作業の失敗などを見越して複数の個体を用意しておくと安心です。

主な観察ポイント(トビケラ幼虫の検索に頻出の同定キー)

・非常に重要:巣の有無(巣がある場合、その形状や巣材の情報)/ 胸部各節のキチン化の有無(キチン化する場合、そのキチン板の配置)/ 腹端背面のキチン板の有無

  / 腹部の肉質隆起の有無(肉質隆起がある場合、その位置)/ 腹部のえらの有無(えらがある場合、その本数や配置)/ 各脚の長さ(後脚が他の脚よりも著しく長い

  等)

・重要なことがある:前脚基部の突起状構造物の有無(突起状構造物がある場合、その形状)/ 触角の位置 / 上唇の形状やそこから生えるの本数 / 頭部・胸部の斑紋の

  ターン / 腹端部(尾肢周辺)の剛毛の本数 等

国産トビケラ幼虫 各科への検索

​​​スタート

可携巣に入っていない(=固着巣を作るか、巣をもたない)

or 可携巣に入っていたかどうか分からない

【非ケーストビケラ】(本ページ下部)へ

 

【細】:頑張れば肉眼でも見えるが、細部であるため

    観察には顕微鏡やルーペがあると好ましい

【顕】:観察には顕微鏡やルーペが必要

黄色の太字:観察が容易で便利、または重要な同定キー

可携巣に入っている。巣の大きさ・形状・巣材はきわめて多様。 ​▷【ケーストビケラ】(別ページ)

 

​【非ケーストビケラ】※または可携巣から飛び出た可能性のあるケーストビケラ

(1)のようでない

(1)①腹部第1節の背面 or 側面 or その両方に肉質隆起がある

    ②中胸背面には大きなキチン板があり、後胸背面はおおむね膜質で2~3対のキチン板の小片がある

​    上記①・②のどちらか一方でも当てはまる場合、【ケーストビケラ】へ

​胸部背面はすべてキチン化する

​中胸・後胸背面は膜質

腹部にふさ状のえらがない

尾肢の基部に多数の剛毛が生えない

・頭部はやや縦長

・尾爪の内側に大小の内歯が多数列生する

 【顕】

※生時、生息地によっては全体的に透明感が

 強いため胸部のキチン板を見落とさないよ

 うに注意

腹部にふさ状のえらがある

・尾肢の基部に多数の剛毛が生える

・頭部は縦長でない

・尾爪の内側には目立った内歯がない【顕】

腹部第9節背面にキチン板がある【細】

・腹部にふさ状のえらがあるものがいる

・体はきわめて伸縮性に富む

・体は緑~水色

前脚の爪は湾曲した針状に変形する【顕】

・腹部にえらはない

・体色はさまざま

前脚の爪は変形しない【細】

・腹部にふさ状のえらがあるものがいる

腹部第9節背面にキチン板がない【細】

・腹部にふさ状のえらはない

​(2)・上唇は膜質(半透明)で幅広い【細】

     ※生時よりむしろ液浸標本のほうが

      観察しやすい場合が多い

    ・頭・胸部は橙色、腹部は乳白色

(2)のようでない

(3)のようでない。小~中型

(終齢時20 mm以下)で、

  腹部は不透明な暗色でない。

​(3)・腹部は不透明で暗色

    ・頭部は縦長

    ・大型(終齢時は25 mmを超す)

    ・前脚基節前方に2本の棘状突起

     がある【顕】

前脚前側板の先端は鋭く前方に突出する【顕】

※頭部と重なると非常に観察しにくくなるため、

 頭部と前胸の間でサンプルをちぎると分かり

 やすい。場合によっては邪魔な脚も切除推奨。

​※画像は同様の特徴を持つムネカクトビケラ科

​(4)①腹部第1節腹面に棒状のえらがある【細】

    ②尾肢の基部に数本の指状突起がある【細】

    ​・上記 ①・② のいずれかに合致する

シンテイトビケラ科(未観察)

前脚前側板の先端は前方に突出するが、

​先端は尖っておらず、へら状

(4)のようでない

​・中胸背板の側面は前方に突出し、前胸に重なる【細】

・頭部下面前方に一対のキチン板がない【顕】

キブネクダトビケラ科(未観察)

​・下唇は長く、頭部の先端を超す【顕】

・各脚の跗節は幅が広い【顕】

ニセスイドウトビケラ科(未観察)

​・中胸背板に突出部はない【顕】

頭部下面前方に一対のキチン板がある【顕】

​・下唇は短く、頭部の先端を超さない【顕】

・各脚の跗節は幅が広くない【顕】

・生時は体の透明感が強いものが多い

日本産水生昆虫 第二版(川合・谷田 編,2018);

川虫図鑑 成虫編(丸山・花田 編,2016)をもとに改変

補足資料的ですが、国産トビケラ各科の特徴を一覧にした表を以下に示します。上で同定した結果が合っているかどうかのチェックにどうぞ。

(表:作成中…)

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