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アミメカワゲラ科 Perlodidae
 

小型~大型種まで形態の多様性に富んだカワゲラです。図鑑的には

 ​ ①中胸・後胸の側面(各脚の基部)に糸状(ふさ状)のえらがない

  ②下唇の中舌は側舌より小さい

  ③下唇の側舌は三日月型に湾曲しており、後期幼虫の翅芽は体側に強く張り出す

以上の3点によって同定されますが、中~大型種が多く特徴的な外見をしているものも少なくないため、ある程度までは絵合わせ同定で属・種の見当をつけることもできます。なお一部の種群(アミメカワゲラモドキ族・クサカワゲラ属)は種数が多く、2024年現在、未記載が多いことなどもあって分類体系が混乱しているため、さらなる研究が待たれます。​


下位分類(国産既知種のリスト)


アミメカワゲラ亜科 Perlodinae
 ヒロバネアミメカワゲラ族 Arcynopterygini
  オオアミメカワゲラ属 Megarcys
    
・オオアミメカワゲラ Megarcys ochracea Klapálek, 19012
  ニッコウアミメカワゲラ属 Sopkalia
    
・ニッコウアミメカワゲラ Sopkalia yamadae (Okamoto, 1917)
  ヒロバネアミメカワゲラ属 Pseudomegarcys
    ・ヒロバネアミメカワゲラ Pseudomegarcys japonica Kohno, 1946
  ヒメアミメカワゲラ属 Skwala
    ・ヒメアミメカワゲラ Skwala compacta (McLachlan, 1872)
    ・ミスジアミメカワゲラ Skwala natorii Chino, 1999
 アミメカワゲラ族 Perlodini
  アミメカワゲラ属 Perlodes
    ・フライソンアミメカワゲラ(=アミメカワゲラ) Perlodes frisonanus Kohno, 1943
  シノビアミメカワゲラ属 Megaperlodes
    ・シノビアミメカワゲラ Megaperlodes nigar Yokoyama et al., 1986
  コウノアミメカワゲラ属 Tadamus
​    ・コウノヒメカワゲラ Tadamus kohnonis (Ricker, 1952)
 アミメカワゲラモドキ族 Diploperlini
​  ヒメカワゲラ属 Stavsolus
    ・ヒメカワゲラ Stavsolus japonicus (Okamoto, 1912)
    ・アイヌヒメカワゲラ Stavsolus ainu Teslenko 1999
  コグサヒメカワゲラ属 Ostrovus
    
・コグサヒメカワゲラ Ostrovus mitsukonis (Okamoto & Kohno, 1940)
    ・ニッコウコグサヒメカワゲラ(=クロコグサヒメカワゲラ) Ostrovus nikkoensis (Okamoto, 1912)
  アサカワヒメカワゲラ属 Kogotus
    
・アサカワヒメカワゲラ Kogotus asakawae (Kohono, 1941)

クサカワゲラ亜科 Isoperlinae
  クサカワゲラ属 Isoperla
    
・アイヅクサカワゲラ Isoperla aizuana Kohono, 1953
    ・アルタイクサカワゲラ Isoperla altaica Šámal, 1939 (Syn. Isoperla azusana Kohono, 1953)
    ・ホソクサカワゲラ Isoperla debilis Kohono, 1953
    ・フクシマクサカワゲラ Isoperla fukushimensis Kohono, 1953
    ・カッパクサカワゲラ Isoperla kappa Ishizuka, 2002
    ・オニクサカワゲラ Isoperla motonis (Okamoto, 1912)
    ・フタスジクサカワゲラ Isoperla nipponica Okamoto, 1912
    ・オカモトクサカワゲラ Isoperla okamotonis Kohono, 1941
    ・ヤマクサカワゲラ Isoperla shibakawae Okamoto, 1912
    ・スズキクサカワゲラ Isoperla suzukii Okamoto, 1912
    ・トワダクサカワゲラ Isoperla towadensis Okamoto, 1912
    ・ウエノクサカワゲラ Isoperla uenoi Kawai,1967
  トゲクサカワゲラ Kaszabia 
    
・トゲクサカワゲラ Kaszabia digitata (Kawai, 1963)
  (日本産水生昆虫 第二版(川合・谷田 編,2018);川虫図鑑 成虫編(丸山・花田 編,2016)に基づく)

​以上、12属26種が知られているほか、過半数の属に未記載種の存在が確認されています。アミメカワゲラモドキ族とクサカワゲラ属は種数が多く、識別が難しいです。

 


フォトギャラリー

 

【アミメカワゲラ亜科 Perlodinae:ヒロバネアミメカワゲラ族 Arcynopterygini

亜終齢/♀(死後すぐに撮影)

2020.03.31 宮城県

齢不詳/雌雄不明

2023.12.08 宮城県

―――――――――【 オオアミメカワゲラ 】―――――――――

生息環境:源流・山地渓流 記録済みの地域:宮城・新潟 幼虫の特徴:各脚の基部に下方に湾曲した指状のえらがある。大型になる。 季節性・化性:春に羽化/1年1化

終齢/雌雄不明

2023.01.08 宮城県

終齢/雌雄不詳

2021.03.10 山形県

―――――――【 ヒロバネアミメカワゲラ種群 】―――――――

生息環境:染み出し・源流・山地渓流 記録済みの地域:岩手・山形・宮城・新潟 幼虫の特徴:各脚の基部に下方に湾曲した指状のえらがある。大型になる。 季節性・化性:春に羽化/1年1化


【アミメカワゲラ亜科 Perlodinae:アミメカワゲラ族 Perlodini

終齢/雌雄不明

2024.12.21 宮城県

亜終齢/雌雄不明

2023.12.18 宮城県

―――――――【 フライソンアミメカワゲラ 】―――――――

生息環境:平地渓流 記録済みの地域:宮城・新潟 幼虫の特徴:属の特徴は下の表を参照。腹部背面各節に4つの黒斑が並ぶ。 季節性・化性:春に羽化/1年1化

亜終齢/雌雄不明

2020.02.01 新潟県

亜終齢/雌雄不明

2024.03.16 山形県

――――――――【 シノビアミメカワゲラ 】――――――――

生息環境:山地渓流・平地渓流(まれ) 記録済みの地域:宮城・新潟 幼虫の特徴:属の特徴は下の表を参照。モノクロの特徴的な体色。胴体の膜質部がピンク色。 季節性・化性:春~初夏に羽化/1年1化

終齢/雌雄不明

2024.03.16 山形県

終齢/雌雄不明

2024.04.06 山形県

終齢/雌雄不明

2021.03.06 宮城県

亜終齢/雌雄不明

2021.03.06 福島県

――――――――――――――――――――――【 コウノアミメカワゲラ属不明種 】――――――――――――――――――――――

生息環境:山地渓流・平地渓流(まれ) 記録済みの地域:山形・宮城・福島・新潟 幼虫の特徴:属の特徴は下の表を参照。明るいオレンジ~黄色の体。スリムな体型。体色や頭・胸部の斑紋の濃さには地域差があり、種内変異なのか種が違うのか不明。少なくとも北日本では本属で最も普遍的な種と思われるため、長らくこちらがコウノヒメカワゲラだと思い込んでいたが、どうやら本家のコウノヒメカワゲラは平地渓流~平地流域で見つかるもの(珍しい)で、より上流方向に生息しているこちらが未記載種のようだ。 季節性・化性:春~初夏に羽化/1年1化

​​亜終齢(?)/雌雄不明(液浸標本)

2018.12.16 新潟県

【 コウノヒメカワゲラ 

観察した環境:平地渓流-平地流移行帯 記録済みの地域:新潟 幼虫の特徴:属の特徴は下の表を参照。体色はオレンジではなく、ステージ後半の幼虫は頭部・胸部背面の斑紋が明瞭で、腹部各節の前半に褐色のバンドが出る。本格的に川虫をはじめる以前に新潟県の大河で写真の個体を記録したのみであり、追認の必要がある。 季節性・化性:詳細不明

齢不詳/雌雄不明

2018.11.18 新潟県

【 アミメカワゲラ属(?)

不明種(未記載?)】

(詳細不明)


【アミメカワゲラ亜科 Perlodinae:アミメカワゲラモドキ族 Diploperlini

終齢/雌雄不明

2022.04.02 宮城県

終齢/雌雄不明

2021.04.11 福島県

亜終齢(?)/雌雄不明

2021.03.27 宮城県

亜終齢(?)/雌雄不明

2021.03.10 山形県

―――――――――――――――――――【 ヒメカワゲラ属たち(ぞれぞれ種は不明)】―――――――――――――――――――

​(詳細不明)

終齢/雌雄不明

2024.03.24 宮城県

亜終齢/雌雄不明

2022.02.05 宮城県

亜終齢/雌雄不明

2023.01.24 宮城県

亜終齢/雌雄不明

2023.01.24 宮城県

―――――――――――――――――――【 ヒメカワゲラ属たち(ぞれぞれ種は不明)】―――――――――――――――――――

​(詳細不明)

亜終齢/雌雄不明

2022.02.05 宮城県

齢不詳/雌雄不明

2019.12.21 宮城県

終齢/雌雄不明

2022.05.04 山形県

終齢/雌雄不明

2023.04.29 岩手県

――――【 ヒメカワゲラ属たち(ぞれぞれ種は不明)】――――

​(詳細不明)

―――【 コグサヒメカワゲラ属たち(ぞれぞれ種は不明)】―――

​(詳細不明)

終齢/雌雄不明

2023.03.20 宮城県

終齢/雌雄不明

2020.04.08 宮城県

終齢/雌雄不明

2021.06.20 山形県

齢不詳/雌雄不明

2020.04.17 宮城県

―――【 コグサヒメカワゲラ属たち(ぞれぞれ種は不明)】―――

【 アミメカワゲラモドキ族たち(ぞれぞれ属・種は不明)】―

​(詳細不明)

​(詳細不明)

終齢/雌雄不明​(羽化直前)

2022.05.04 山形県

終齢/雌雄不明

2022.04.23 宮城県

亜終齢/雌雄不明

2021.03.20 宮城県

亜終齢/雌雄不明

2021.02.07 宮城県

――――――――――【 アミメカワゲラモドキ族たち(ぞれぞれ属・種は不明)】―

​(詳細不明)


観察メモ(アミメカワゲラ亜科)
 ・中~大型種群で、終齢幼虫は10~30 mm程度です。とりわけ大型になるオオアミメカワゲラ・ニッコウアミメカワゲラ・シノビアミメカワゲラは終齢時に35 mmを超す
  ものもいます。
 ・全種、有機汚濁の少ない清冽な河川を好み、河川に農薬や融雪剤などの成分が流入すると真っ先に姿を減らす川虫です。水温の低い河川を好む傾向も強く、北日本では
  広い範囲でさまざまな種がみられますが、西南日本では標高の高い場所に限られる種が多いようです。源流~山地渓流環境で主にみられますが、フライソンアミメカワ
  ゲラやアミメカワゲラモドキ族の一部は開空度の高い平地渓流~平地流を好みます。現代の日本において「自然度の高い平地渓流」の環境はその多くが失われてしまっ
  ていて、そういった環境に依存するカワゲラは観察しにくくなってしまいました。
 ・体表に強いつやがあり、外骨格は水を強く弾きます(撥水性は他の川虫にもしばしばみられますがアミメカワゲラ亜科は顕著)。これは水中の溶存酸素を皮膚呼吸で効
  率よく取り込むために進化した末に得てしまった副産物的な特性と考えられます。
 ・既知の未記載種が多く、種レベルの同定は基本的に控えています。全種、基本的に春羽化の1年1化と思われますが種の線引きが曖昧なため生活史への言及は避けておき
  ます。属への検索は下の表を参照。

 

​表:国産アミメカワゲラ亜科の各属の特徴等

オオアミメカワゲラ

​胸部下面の指状のえら

ヒロバネアミメカワゲラ属

​中胸下面のY字のくぼみ(黄)と腹板孔(赤)

コウノアミメカワゲラ属

​中胸下面のY字のくぼみ(黄)と腹板孔(赤)

フライソンアミメカワゲラ 腹部の輪郭

第1~4節の側面が膜質です。横から観察

するまでもなく、輪郭の形が異なります。

ヒメカワゲラ属の一種

頭部下面後方のえら(白矢印)

(※顕微鏡下でも角度や光の加減次第では

観察しにくいことがあります。)

シノビアミメカワゲラ 腹部の輪郭

第1~6節の側面が膜質です。

​本種の膜質部は朱色で、目立ちます。

コグサヒメカワゲラ属・

​アサカワヒメカワゲラ属

頭部下面後方にえらはありません。


クサカワゲラ亜科 Isoperlinae

終齢/雌雄不明

2023.02.23 宮城県

亜終齢/雌雄不明

2024.01.13 宮城県

――――【 アイヅクサカワゲラ or スズキクサカワゲラ 】――――

生息環境:平地渓流(まれ)・平地流。特に開空度の高い砂地区間を好む。 記録済みの地域:山形・宮城 幼虫の特徴:体色は明るい。腹部背面には3本の灰色条がある。頭部・胸部背面の斑紋が特徴的(画像)。 季節性・化性:春に羽化/1年1化

終齢/雌雄不明(羽化直前)

2020.04.17 宮城県

齢不詳/雌雄不明

2020.05.08 宮城県

―――――――――【 ホソクサカワゲラ 】―――――――――

観察した環境:山地渓流 記録済みの地域:宮城 幼虫の特徴:腹部背面に4本の黒褐色条がある。 季節性・化性:春に羽化/1年1化

齢不詳/雌雄不明

2022.03.09 福島県

【 フタスジクサカワゲラ 】

終齢の2つ前(?)/雌雄不明

2020.12.19 宮城県

終齢/雌雄不明

2023.04.02 山形県

終齢/雌雄不明

2023.04.10 山形県

―――――――――【 クサカワゲラ属たち(フタスジクサカワゲラ近縁種)】―――――――――

観察した環境:平地流 記録済みの地域:福島 幼虫の特徴:腹部背面には3本の灰色条がある。頭部・胸部背面の斑紋が特徴的(画像)。 季節性・化性:春に羽化の1年1化と思われるが詳細不明

​(詳細不明)

終齢/雌雄不明

2022.05.04 山形県

終齢/雌雄不明(羽化直前)

2022.04.30 宮城県

―――――――――【 トワダクサカワゲラ 】―――――――――

生息環境:細流・源流 記録済みの地域:山形・宮城 幼虫の特徴:体色はオレンジ色で、羽化が近い幼虫を除き目立った暗色斑はない。体に対して頭部が大きい。近縁の不明種がおり幼虫での種同定は困難(画像の幼虫は羽化させて種を確定させたもの)。 季節性・化性:春に羽化/1年1化

亜終齢/雌雄不明

2024.02.17 山形県

亜終齢/雌雄不明

2024.02.17 山形県

――【 クサカワゲラ属たち(トワダクサカワゲラ近縁種)】――

​(詳細不明)

終齢/雌雄不明

2023.03.22 宮城県

終齢/雌雄不明

2023.04.19 茨城県

――【 クサカワゲラ属たち(トワダクサカワゲラ近縁種)】――

観察メモ(クサカワゲラ亜科)
 ・小型種群で、ほとんどの種は終齢幼虫で15 mm以下です。
 ・細流・源流から下流域まで広範な範囲に放散しており、種群によって好む環境が
  異なります。
 ・未記載種が多いほか、2024年現在のクサカワゲラ属は多系統群と考えられるた
  め、一部の種は属の移動が必要です。種レベルの同定は一部の既知種を除いて難
  しいですが、特徴的な体斑をもつ既知種については絵合わせ同定で比較的容易に
  見分けることができます。

 

​(詳細不明)

生息環境

​生息環境例(新潟県/6月)

​生息環境例(宮城県/12月)

カワゲラの中でも特に水質良好な河川に執着するアミメカワゲラ科が多く生息する河川です。左の沢はアミメカワゲラ属の不明種(未記載)を採集した場所で、やや上流域に行くとシノビアミメカワゲラやヒロバネアミメカワゲラなどがいます。左の平地流では川底の小礫をかき混ぜると非常に多くのヒメカワゲラ属やアイヅorスズキクサカワゲラが見つかり、少数ですがフライソンアミメカワゲラも生息します。環境そのものに思わず見とれるような、自然度最高レベルの河川を代表する川虫です。


成虫【準備中…】

 
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