【クロカワゲラ科 Capniidae】

染み出し・飛沫帯　　細流（まれ）　　源流　　山地渓流　　平地渓流　　平地流　　河床間隙の利用：○（必須）

湿地・水田　　湖沼　　その他特殊環境

源流域～平地渓流にかけて生息しており、水質が良く流れの早い河川を好みます。寒冷な地域（≒河川の水温が低い地域）ほど下の流程まで進出している傾向があります。種によって環境嗜好が細かく異なっていると推測されますが、一部の種を除き、詳細は分かっていません。

普段は瀬の礫の下に隠れたり、河床に引っかかった落ち葉の塊の中に潜んだりしていると思われます。春～初夏に孵化した極小サイズの幼虫は夏～秋の水温が高い時期に河床間隙で休眠（夏眠）することが知られており、肉眼サイズの幼虫は晩秋～早春の比較的短い期間にしか見ることができません。

河川の一次消費者として機能していますが、自然度の高い河川を好み、そういった川は他の川虫も多いため特定の環境下で優占することはありません。水系全体の物質循環への貢献度は目立って高くはありません。温暖な地域には生息しておらず環境指標生物としての普遍性に欠くため、環境省の定めるスコア法では点数が割り当てられていませんが、北日本では自然度がそれなりに高い～非常に高い渓流の目安として扱うことができます。河床に堆積した礫間の微小空間は幼虫の休眠および生活の場として重要であり、ダム建設や山林の伐採などに伴って砂泥が流出し河床の目詰まりが起こると生息が困難になります。分布が寒冷地に偏っているうえに幼虫が得られる時期が短いため環境調査などでは顧みられることがほぼないカワゲラですが、分布域内においては環境指標性の高いカワゲラなので、もっと注目されてもいいのにな、と個人的に思うところがあります。

・環境省『水生生物による水質評価マニュアル』スコア区分：―（対象外）

寒冷地に分布の中心をもつ小型のカワゲラです。図鑑的には、

　　①中胸・後胸の側面（各脚の基部）に糸状のえらがない

　　②下唇の中舌と側舌がほぼ同大

　　③体は扁平でなく、テールは体長の1/2よりも長く、ステージ後半の幼虫の左右の翅芽は基部で接しない（ヒロムネカワゲラ科との識別点）

　　④各脚の跗節の第2節は第1節より明らかに小さく、腹部第9節の腹板はへら状に変形しない（シタカワゲラ科との識別点）

以上の4点によって同定されますが、②・④は顕微鏡下での観察が必要です。体表のつや・体型などの総合的な雰囲気から、慣れれば肉眼でも科レベルまでは見分けられるようになりますが、ミドリカワゲラ科・オナシカワゲラ科・シタカワゲラ科は互いに似ており、これらをスムーズに見分けるには慣れが必要です。