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【ヒゲナガカワトビケラ科 Stenopsychidae
 

​イモムシ型の大型トビケラです。図鑑的には、

  ①可携巣をもたず胸部背面は前胸のみがキチン化する

  ②腹部第9節背面にキチン板はない

  ③上唇は膜質でない(カワトビケラ科との区別点)

​  ④前脚の基部に2対の突起があり、頭部は細長い

以上の4点を確認することで同定されます。幼・成虫ともに特徴的な外観をしており国産種数も少ないため、少なくとも国内では、慣れれば細部を確認せずともすぐに見分けることができます。渓流性のトビケラとしては国内最大種であり、大きく育った終齢幼虫の姿はインパクトがあります。


下位分類(国産既知種のリスト)


  ヒゲナガカワトビケラ属 Stenopsyche
    
・ヒゲナガカワトビケラ Stenopsyche marmorata Navás, 1920
    ・シロアシヒゲナガカワトビケラ Stenopsyche pallens Nozaki, Arefina & Hayashi, 2008
    ・チャバネヒゲナガカワトビケラ Stenopsyche sauteri Ulmer, 1907
    ・オキナワヒゲナガカワトビケラ Stenopsyche schmidi Weaver, 1987
    ・シナノヒゲナガカワトビケラ Stenopsyche sinanoensis (Kobayashi, 1954)
  川虫図鑑 成虫編(丸山・花田 編,2016)に基づく)

​以上、1属5種が知られています。日本本土でよくみられる種はヒゲナガカワトビケラ・チャバネヒゲナガカワトビケラの2種です。シロアシは北海道、オキナワは南西諸島に生息しており、シナノは原記載以降の記録がほとんどない詳細不明の種です。

 


フォトギャラリー

終齢/雌雄不明

​2024.12.21 宮城県

終齢/雌雄不明

​2022.05.24 宮城県

亜終齢/雌雄不明

​2021.06.07 宮城県

――――――――――――――――――――――――【 ヒゲナガカワトビケラ 】――――――――――――――――――――――――

生息環境:山地渓流・平地渓流・平地流(まれ) 記録済みの地域:岩手・山形・宮城・新潟・福島・東京・愛知 幼虫の特徴:頭部が細長い大きなイモムシ型幼虫。頭盾には縦長の黒斑があり、前脚基部の棘は大きい。 季節性・化性:生息地の気候によって化性が異なることが判明している。南東北エリアでは春と秋に羽化する1年2化。/1年1~2化

亜終齢/雌雄不明

​2023.12.24 山形県

【チャバネヒゲナガカワトビケラ】

生息環境:山地渓流・平地渓流 記録済みの地域:山形・宮城・新潟 幼虫の特徴:頭部が細長い大きなイモムシ型幼虫。頭盾には縦長の黒斑がなく、前脚基部の棘は小さい。 季節性・化性:生息地の気候によって化性が異なることが判明している。南東北エリアでは初夏に羽化する1年1化。/1年1~2化

観察メモ
 ・黄色に黒点が散らばった細長い頭部が特徴的ですが、大きく育った幼虫はではむしろ、多量の餌を食べて大きく肥大した腹部が
  目を引きます。
 ・自由水中に放り込むと持ち上げた腹部を左右にリズミカルに振って泳ごうとしますが、まともな遊泳はできません。あくまでも
  危険回避のためにほんの少しでも移動しようとする苦肉の策のように思います。
 ・腹部の色は種にかかわらず産地や個体によって紫褐色~暗緑色まで変異があります。頭部に関してはほとんどの個体が黄色です
  が、まれに頭部全体が黒斑が分からないほど黒化するものもいます。
 ・非常によく目につく身近なトビケラなこともあり、川虫の中では基礎的な研究が古くからよく行われている部類です。特にヒゲ
  ナガカワトビケラとチャバネヒゲナガカワトビケラとの巧妙な季節的すみわけは生態学的に面白いので、興味のある方はぜひ
  以下を読んでみてください。
   青谷 晃吉横山 宣雄. 1987. 東北地方におけるヒゲナガカワトビケラ属2種の生活環について (外部リンク)
 ・生きた幼虫の細部を観察すると尾肢の基部にある触手状の器官が目にとまります。これは浸透圧の調整に役立っているそうです。
  筆者は小学校低学年ではじめてヒゲナガカワトビケラの幼虫を捕まえて家で観察していたとき、この触手を体内に寄生している
  寄生虫の頭と勘違いし、ピンセットで執拗に引き抜こうとしました。もちろんこの触手状の器官はトビケラの体の一部なので、
  器官を損傷されたその個体はすぐに弱って死んでしまいました。苦い思い出です。
 ・トビケラ目幼虫は液浸標本にされる際に胃の内容物を一気に吐き出すものが一定数いますが、本科の大型幼虫は胃の容量も体に
  蓄えられている油の量も川虫界トップクラスなため、保存液を著しく汚します。もし液浸標本を長期保存する場合には標本処理
​  後2~3日後に保存液を一度入れ替えるのがおすすめです。

 

ヒゲナガ      チャバネヒゲナガ

​画像:ヒゲナガカワトビケラとチャバネヒゲナガ

カワトビケラの幼虫の識別(上:頭部 / 右:前脚基部)

ヒゲナガ

チャバネヒゲナガ

尾肢の基部にある触手状の器官

​(シマトビケラ亜科によくみられる)

刺激を受けると体内に引っ込みます。

シマトビケラ科やナガレトビケラ科などにみられる腹部のえらは呼吸器官

ですが、こちらは​浸透圧調整に

関係する器官なのだそう。

生息環境

​生息環境例(宮城県/8月)

​河床の幼虫の巣


成虫【準備中…】
 

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