An Artless Riverside 川虫館
【シタカワゲラ科 Taeniopterygidae】
【ホソカワゲラ科(旧:ハラジロオナシカワゲラ科) Leuctridae】
スリムな体型とツヤのある半透明の体が特徴の小型カワゲラです。図鑑的には、
①中胸・後胸の側面(各脚の基部)に糸状のえらがない
②下唇の中舌と側舌がほぼ同大
③体は扁平でなく、テールは体長の1/2よりも長く、ステージ後半の幼虫の左右の翅芽は基部で接しない
④後期幼虫の翅芽は体の側面に大きく張り出さず、腹部第8・9節は背板と腹板が癒合しており境目が不明瞭
以上の4点によって同定されますが、独特の雰囲気から、慣れれば野外でもすぐに識別することができます。河床の表面から十数cm~数m下の、伏流水が流れる河床間隙空間を利用していると思われ、小さく退化した複眼や色素を失った外骨格は光の届かない地下水中の環境に適応した結果と思われます。
下位分類(国産既知種のリスト)
カギホソカワゲラ属 Paraleuctra
・ユキホソカワゲラ Paraleuctra ambulans Shimizu, 2000
・カドホソカワゲラ Paraleuctra angulata Shimizu, 2000
・モンホソカワゲラ Paraleuctra cercia (Okamoto, 1922)
・クボミホソカワゲラ Paraleuctra concava Shimizu, 2000
・エゾホソカワゲラ Paraleuctra ezoensis Shimizu, 2000
・ホクリクホソカワゲラ Paraleuctra hokurikuensis Shimizu, 2000
・オカモトホソカワゲラ Paraleuctra okamotoa (Claassen, 1936)
・ニセホソカワゲラ Paraleuctra similis Shimizu, 2000
ハルホソカワゲラ属 Perlomyia
・アイヌホソカワゲラ Perlomyia ainu Sivec & Stark, 2012
・ギフホソカワゲラ Perlomyia gifuensis (Kohno, 1965)
・ホンシュウホソカワゲラ Perlomyia honshu Sivec & Stark, 2012
・イソベホソカワゲラ Perlomyia isobeae Sivec & Stark, 2012
・イワテホソカワゲラ Perlomyia iwate Sivec & Stark, 2012
・カッパホソカワゲラ Perlomyia kappa Sivec & Stark, 2012
・カーストホソカワゲラ Perlomyia kersti Sivec & Stark, 2012
・ハルホソカワゲラ Perlomyia nipponica (Okamoto, 1922)
・コホソカワゲラ Perlomyia parva (Kawai, 1967)
・ナミガタホソカワゲラ Perlomyia sinuata Sivec & Stark, 2012
・ガッケンホソカワゲラ Perlomyia gakken Nakamine, 2022
トゲホソカワゲラ属 Rhopalopsole
・アマミホソカワゲラ Rhopalopsole amamiensis Kawai, 1967
・フタマタホソカワゲラ Rhopalopsole bifurcata Sivec & Shimizu, 2008
・マルミホソカワゲラ Rhopalopsole bulbifera Sivec & Shimizu, 2008
・エビノコウゲンホソカワゲラ Rhopalopsole ebinokogen Sivec & Shimizu, 2008
・ナガトゲホソカワゲラ Rhopalopsole elongata (Kawai, 1967)
・オナガホソカワゲラ Rhopalopsole longicercia Kawai, 1968
・オキナワホソカワゲラ Rhopalopsole longipiprocta Sivec & Shimizu, 2008
・マルヤマホソカワゲラ Rhopalopsole maruyamai Sivec & Shimizu, 2008
・ニセトゲホソカワゲラ Rhopalopsole pseudodentata Sivec & Shimizu, 2008
・シコクホソカワゲラ Rhopalopsole pseudoshigae Sivec & Shimizu, 2008
・シガホソカワゲラ Rhopalopsole shigae Sivec & Shimizu, 2008
・オマガリホソカワゲラ Rhopalopsole sinuacercia Sivec & Shimizu, 2012
・ナツホソカワゲラ Rhopalopsole subnigra Okamoto, 1922
・タイワンホソカワゲラ Rhopalopsole taiwanica Sivec & Shimizu, 2008
・ウチダホソカワゲラ Rhopalopsole uchidai Sivec & Shimizu, 2008
(川虫図鑑 成虫編(丸山・花田 編,2016)に基づく)
以上、3属34種が知られています。東アジア産の種群は2000年~2012年にかけて一斉に整理され、この期間を境に既知種の数が大きく増加しました。成虫のみで記載されている種や幼虫と成虫の対応が明らかでない種も多いほか、未記載種も多く存在していると思われます。形態は互いに酷似しており、幼虫時点での正確な種同定は困難です。私は科レベルで同定を止めています。
フォトギャラリー
終齢/♂(羽化直前)
2024.04.12 宮城県
亜終齢/雌雄不明
2023.12.24 山形県
終齢の2つ前(?)/雌雄不明
2023.11.25 宮城県
齢不詳/雌雄不明
2022.12.23 宮城県
――――――――――――――――――【 ホソカワゲラ科たち(それぞれ属・種は不明 )】――――――――――――――――――
生息環境:源流(まれ)・山地渓流・平地渓流(安定した河床間隙がある区間に多い/好む流程は種ごとに細かく異なると思われる) 記録済みの地域:-(種レベルで同定していないため割愛) 幼虫の特徴:細身で無斑、体は半透明。触角とテールが細い。 季節性・化性:-(種レベルで同定していないため割愛/先行研究事例は少ないが、多くは春に羽化し1年1化と思われる)
観察メモ
・触覚の長さは体長の半分程度、テールの長さは体長の半分~同程度です。
・河床間隙の生活者であるためか高い溶存酸素レベルは要求しませんが、幼虫は高水温に非常に弱く、生体の扱いには注意が必
要です。
・華奢な見た目通り、外骨格の発達がきわめて弱いため体が損傷しやすいです。特に触覚とテールは折れやすく、採集時に損傷
してしまうことが多いです。なお小型の個体は野外(肉眼)では脚のつき方などが観察しにくい場合があり、カワトビケラ科
の若齢やユスリカの幼虫とややこしいことがあります(触覚やテールが欠損していると尚更)。
・強い負の光走性があります(撮影容器の中で絶え間なく動き回り撮影が大変でした)。
・エタノールやホルマリンで固定すると丸まった姿勢で固定されてしまうことが多いです。
・ハルホソカワゲラ属は腹部第8・9節、カギホソカワゲラ属・トゲホソカワゲラ属は第7・8・9節の背板と腹板が癒合していま
すが、体が無色で表皮が薄いため背板と腹板の境目が不明瞭なため顕微鏡下でも判断に迷うことがあります。
齢不詳/雌雄不明
2024.12.01 宮城県
【 ホソカワゲラ科の一種
(属・種不明)】
幼虫の体表には毛がほとんどなく(脚や体節間などから
ごく細く長い感覚毛が疎らに生えるが目立たない)、
つやがあります。アミメカワゲラ科の諸種と同様に
体表には強い撥水性があります。
腹部側面
属レベルの同定キーには「第何節以降で背板と腹板が癒合するか」というものがありますが、正直ほとんどの場合ではっきり見えません。