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【ホソバトビケラ科 Molannidae】
 

​砂で作った扁平で軟質の可携巣が特徴の中型トビケラです。図鑑的には、

​  ①中胸背面は広くキチン板に覆われ、後胸は大部分が膜質でキチン板はほぼ目立たない

  ②触角は頭部前縁にあるが短小で目立たず、腹部第1節背面に肉質隆起をもつ

  ③後脚が前・中脚より細長く、爪の形状が前・中脚のそれと異なる

以上の3点で他科と区別されます。また、砂・細礫で強度の低い扁平な可携巣を作ることも非常に特徴的であるため、見慣れてしまえば巣だけでも科レベルまで容易に同定可能です。


下位分類(国産既知種のリスト)


  ホソバトビケラ属 Molanna
    ・ホソバトビケラ Molanna moesta Banks, 1906
    ・クロホソバトビケラ Molanna nervosa Ulmer, 1927
    ・ヤエヤマホソバトビケラ Molanna yaeyamensis Ito, 2006
  コガタホソバトビケラ属 Molannodes
    ・イトウホソバトビケラ Molannodes itoae Fuller & Wiggins, 1987
  川虫図鑑 成虫編(丸山・花田 編,2016)に基づく)

​以上、2属4種が知られています。2属で1科をなす小規模な属で、国産種に関しては分布・生態ともに比較的よく判明しています。

 


フォトギャラリー

終齢/雌雄不明

​2018.11.08 新潟県

亜終齢(?)/雌雄不明

​2024.01.01 山形県

巣のみ

​2018.12.26 新潟県

――――――――――――【 ホソバトビケラ 】―――――――――――――――――――――

生息環境:山地渓流~平地流の砂地の緩流部、池・沼 観察した地域:岩手・宮城・福島・新潟・愛知 幼虫の特徴:巣は砂と細礫をゆるく固めて作られており、盾を伏せたような平らな形。扁平な円筒形の周囲を薄くのばしたような形で巣を作るが、外周部は簡単に崩れるため巣の形は個体によってさまざま。幼虫は後脚が長く、腹部第一節背面の肉質隆起が目立つ(科の特徴)。巣の概形や幼虫形態で種レベルまで同定可能だが、野外で確実に見分けるのは難しい。 季節性・化性:春~秋まで長く非同調的に羽化/1年1~3化


観察メモ
 ・ホソバトビケラのみが普遍的にみられ、同科他種は2024年12月時点で未観察です。
​ ・
砂粒を絹糸でつなぎ合わせて可携巣を作りますが巣の強度はそれほど高くなく、巣は力を加えると屈曲します。いびつな円筒形の巣がまずあり、そこから巣の輪郭を拡
  張するように平面的に砂をくっつけていき、最終的に楕円あるいは紡錘形の巣になります。巣の開口部は張り出した巣の縁に隠れるため、上部から観察すると幼虫の姿
  が見えません。飼育容器内などでは砂の塊(巣)が不自然に動く様子が観察できます。

 ・種によって巣の輪郭の拡張パターンに軽微な違いがみられ、巣を裏返した際の開口部から巣の上端部までの距離が種を推定する手掛かりとなります。ただし巣は破損し
​  やすいため、確実な種同定には幼虫本体(頭・胸部の斑紋や後脚の爪周辺の構造)の観察が必要です。
 

胸部背面(ホソバトビケラ)

赤:前胸、黄:中胸、青:後胸、

ピンク矢印:腹部第一節背面の肉質隆起

幼虫 頭部(ホソバトビケラ)

エグリトビケラ亜科に多い、頭部の

逆V字の斑紋が明瞭です。

巣 横アングル

​盾を伏せたような独特の形状です。

巣の内側表面

​砂粒表面に絹糸が張り巡らされていますが、糸の密度は他の多くのトビケラよりも低く、巣の強度は高くありません。


成虫(未観察)
 
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