【ミドリカワゲラ科 Choroperlidae】

染み出し・飛沫帯　　細流　　源流　　山地渓流　　平地渓流　　平地流　　河床間隙の利用：○（必須）

湿地・水田　　湖沼　　その他特殊環境

上流から下流に至るまで、河川に広く放散しているグループです。種によって好む環境がそれぞれ異なっていると考えられますが、分類学的な基礎研究が不十分なため種ごとの生態学的な知見は蓄積されていません。幼虫は河床を広く利用しており、他の多くの川虫同様に主に河床の礫間を棲み処とするほか、流木の下やリターの中から採集されることもあります。若齢～中齢期の幼虫は専ら河床間隙で暮らすと思われ、ステージの進んだ後期幼虫になると、やっと河床の表面近くに出てきます。

シュレッダー（破砕食者）　グレイザー（刈取食者）　コレクター（収集食者）　プレデター（捕食者）

幼虫の食性の詳細は長い間詳細不明でしたが（解明が難しかったというよりは単に調べられていなかった）、根岸ら（2022）の研究によって、北海道に生息するイシカリミドリカワゲラはユスリカの幼虫や水生の小型ミミズなどの動物を捕食する純粋な肉食性であることが分かりました。他種に関しても類似した食性をもつと思われます。一般にカワゲラは大型種が肉食で小型になればなるほど雑食性・草食性が強まる傾向にありますが、カワゲラ目随一の小型種（キミドリカワゲラ属・ヒメミドリカワゲラ属）を含む本科が純粋な肉食であることは例外的ともいえます。

河川の二次消費者として機能しています。河床間隙がよく保存されている河川のバロメータとしてみることは一応できますが、科全体としての環境嗜好は多岐にわたるため環境の指標性はそれほど高くないと考えます。環境省のスコア法では9点という高いスコアが割り振られていますが、後期幼虫が採集できる期間が冬の後半～初夏に限定されることや多少の有機汚濁が認められる中流～下流でもしばしば見つかることを加味すると、9点というスコアはちょっと過大評価な気がしなくもないです。下位分類の研究が進展すれば種ごとの環境撹乱への耐性や細かい環境嗜好が調査・議論できるようになるため、研究の進展が期待されます。

・環境省『水生生物による水質評価マニュアル』スコア区分：9

細長い体型の小型のカワゲラです。図鑑的には、

　　①中胸・後胸の側面（各脚の基部）に糸状のえらがない

　　②下唇の中舌は側舌より小さい

　　③テールは腹部の長さより明らかに短く、後期幼虫の翅芽は体側に強く張り出さない

以上の3点によって同定されます。同じく小型のクロカワゲラ科・オナシカワゲラ科・ホソカワゲラ科と紛らわしいですが、テールが他のカワゲラに比べて際立って太く短いため、慣れれば野外でもすぐに科レベルまでは見分けられるようになります。下位分類に関しては研究が十分に進んでおらず、属・種レベルの同定は一部の既知種や特に分かりやすいものを除いて難しいです。