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【トビイロカゲロウ科 Leptophlebiidae】
 

​小型~中型のカゲロウで、やや扁平な細長い体型です。目立つ大あごがあったり器官の一部が大きく発達していたりすることはなく、カゲロウとして標準的なフォルムをしている幼虫です。

  ①頭部前方に突出した大顎がない

  ②体長の1/2程度の長さの触覚と、体長と同程度の長さの3本のテールをもつ

  ③腹部各節のえらは各節から一対ずつ生えており、途中で2~多数(属によって異なる)に分岐する

以上の3点で他科から区別されますが、触覚とテールは採集時に損傷してしまうことが多く、えらの分岐を詳しく観察するには顕微鏡が必要です。

慣れれば、体表の質感や体型・サイズなどの全体的な雰囲気で野外・肉眼でも属レベルまでは同定可能です。


下位分類(国産既知種のリスト)


  リュウキュウトビイロカゲロウ属 Chiusanophlebia
    ・リュウキュウトビイロカゲロウ Chiusanophlebia asahinai Uéno, 1969
  ヒメトビイロカゲロウ属 Choroterpes
    ・ヒメトビイロカゲロウ Choroterpes altioculus Kluge,1984
    ・クロトビイロカゲロウ Choroterpes nigella (Kang & Yang, 1994)
  トビイロカゲロウ属 Paraleptophlebia
    
・ナミトビイロカゲロウ Paraleptophlebia japonica (Matsumura, 1931)
    ・トゲトビイロカゲロウ Paraleptophlebia spinosa Ueno, 1931
    ・ウェストントビイロカゲロウ Paraleptophlebia westoni Imanishi, 1937
  トゲエラカゲロウ属 Thraulus
    ・ウスグロトゲエラカゲロウ Thraulus fatuus Kang & Yang, 1994
    ・オオトゲエラカゲロウ(和名要再検討)Thraulus cursus Grant, 2024(旧 Thraulus grandis Gose, 1980)
    ・ヒメトゲエラカゲロウ Thraulus macilentus Kang & Yang, 1994
    ・(和名未定)
Thraulus ishiwatai Grant, 2024
    ・(和名未定)Thraulu nihonensis Grant, 2024
  (日本産水生昆虫 第二版(川合・谷田 編,2018);川虫図鑑 成虫編(丸山・花田 編,2016)に基づく)

​以上4属11種が知られています。ほかにも、2016年時点でトビイロカゲロウ属に1種以上の未記載種が確認されています。

 


フォトギャラリー

​​亜終齢/♂

2024.04.12 宮城県

​​終齢/♂(羽化前)

2022.09.04 宮城県

亜​​終齢/♀

2024.04.12 宮城県

終齢/♀(羽化前)

2021.06.10 宮城県

―――――――――――――【 ヒメトビイロカゲロウ 】――――――――――――――――――

観察した環境:平地渓流 記録済みの地域:岩手・宮城 幼虫の特徴:頭部前方が張り出しており、頭の輪郭は四角い。腹部第2~7節のえらの先端は3又する。小型。クロトビイロカゲロウとの識別は難しいが、クロトビイロよりもはるかに一般的。 季節性・化性:春~秋に羽化(仙台市では春と秋に多数の羽化を確認したことがある)/1年2世代?

終齢/♂

2024.04.12 宮城県

​​​終齢/♂

2023.04.20 山形県

――――――――【 ナミトビイロカゲロウ 】――――――――

生息環境:山地渓流・平地渓流 記録済みの地域:山形・宮城・新潟・東京 幼虫の特徴:黄色~赤褐色で、目立つ斑紋はない。体表の光沢が強い。トゲトビイロカゲロウおよび近縁未記載種との識別は肉眼では困難(顕微鏡下では、腹部第9節側面に突起はない)。 季節性・化性:春~初夏に羽化/1年1世代

​​終齢/♂(羽化直前)

2024.04.26 宮城県

​​終齢/♀

2024.04.26 宮城県

――――――――【 トゲトビイロカゲロウ 】――――――――

生息環境:細流・山地渓流・平地渓流(まれ) 記録済みの地域:青森・山形・宮城 幼虫の特徴:黄色~赤褐色で、目立つ斑紋はない。体表の光沢が強い。ナミトビイロカゲロウおよび近縁未記載種との識別は肉眼では困難(顕微鏡下では、腹部第9節側面に微小な突起が並ぶ)。 季節性・化性:春に羽化/1年1世代

亜終齢/♂

2021.12.26 宮城県

終齢/♀

2022.04.30 宮城県

終齢/♀

2021.04.04 宮城県

――――――――――【 トビイロカゲロウ属たち(ナミ or トゲ or 未記載)】――――――――――

​(詳細不明)

終齢/♀

2024.09.19 秋田県

【ウェストントビイロカゲロウ】

生息環境:源流・山地渓流。自然度の高い細い沢におり、分布は局地的。 記録済みの地域:秋田・山形 幼虫の特徴:胴体がまだら模様で、同科他種との識別は容易。腹部の各えらが根元から2又に分岐する、テール前半に長毛が密生するという特徴もある。 季節性・化性:春~秋まで成虫の記録があるが、まとまった記録は少なく羽化ピークがいつなのかはよく分かっていない/1年1世代?

終齢/♀

2024.09.19 秋田県

終齢/♀

2021.08.02 山形県

――――【ウェストントビイロカゲロウ】―――――――

​​終齢/♀,亜終齢/雌雄不明
2019.03.14 鹿児島県 奄美大島

【 オオトゲエラカゲロウ 】

生息環境:細流・渓流のサイドプール(たまり)・止水域 記録済みの地域:鹿児島県(奄美大島) 幼虫の特徴:体は濃い赤褐色。えらの先端は羽毛状に細かく分岐する。同属他種とは上唇および腹部第1節の鰓の構造の差異で識別可能だが野外で確実に判別するのは難しい。 季節性・化性:春~初夏に羽化/1年1世代


観察メモ
 ・​​幼虫の外部形態の雌雄差は顕著ではありませんが、ステージ後期の幼虫では♀が♂よりもわずかに大柄です。また、ステージ後半の♂幼虫の複眼は♀幼虫の複眼の2~3
  倍ほどの大きさに発達します。
 ・自然下ではリタ―の中や礫裏・礫表面などでじっとしていることが多いため積極的に泳ぐことはありませんが、刺激を加えると体全体を上下にくねらせて直線的に泳ぎ
  ます。

​ ・幼虫は夜行性が強く、暗い時間には川底の表面を活発に這いまわっていることがあります。
​ ・エタノールやホルマリンで固定した際の体型の変化や色の変化(退色)は顕著ではありません。ただし、元々もろい触覚やテール​はきわめてれやすくなり、完全な状態
  で液浸標本を保存するのは高難度です。

 


​成虫【準備中…】
 

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