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#1 釣り用語リスト

  • 執筆者の写真: hisame
    hisame
  • 3月18日
  • 読了時間: 6分

川虫は昆虫の中では(チョウやトンボ・カブトムシ・クワガタムシなどと比べると)決して人気の高いグループではありませんが、釣り人からは渓流釣り(フライフィッシング)の餌として高い利用価値を見出されており、虫好きよりもむしろ釣り好きによく認知・研究されているという側面があります。

同じものを扱うにしても、もちろん生物の研究者と釣り人とでは対象との接し方や着眼点に大きな違いが生まれるため、古くから川虫の研究は「同じ山の同じ頂上に向かう登山道を2つの団体が別々に整備している」ような状態で進められてきました。

これは昆虫の他のグループではあまり見られない現象で、それゆえの問題点もあります。そのひとつが「用語のゆらぎ」です。

研究者サイドは『幼虫』『成虫』などの一般的な生物学の用語を用いる一方、近・現代の釣り業界には(渓流釣りに限らず)カタカナ用語が多いため、釣り人サイドは『ニンフ』『ラーバ』『イマージャー』『スピナー』などといったカタカナ用語で川虫の様子を記述しているといった具合です。

本HPの訪問者の中にはフライフィッシャーの方も多くいらっしゃると思うので、釣り(フライフィッシング)用語のリストを以下に作成してみました。渓流釣りから川虫に興味を持った方もそうでない人も、参考にどうぞ。




以下、釣り(フライフィッシング)用語あいうえお順


イマージャー(エマージャー)…emerger/羽化の最中、あるいは羽化直後の川虫。とりわけ水面羽化、あるいは水中羽化で水面へ自由浮上してくるタイプのカゲロウ・トビケラ類のことを指すのが一般的。時間的にきわめて短い(数秒~数分程度)状態のことを指しているが、浮上中や水面に浮くタイミングで魚がよく食いつくため、釣り業界では固有名詞化している。


岩チョロ…岩の表面をチョロチョロ這いまわる川虫の総称。代表的なものとしてはヒラタカゲロウ科や小型のカワゲラ等。


鬼チョロ…川底を這いまわる川虫のうち、大きくていかついものの総称。主に大型のカワゲラを指す。


カディス…caddis/トビケラ。英名(caddisfly)そのまま。


キンパク…早春期によく目につく体が金色(明るい黄色)の中~大型川虫の総称。1年1化であり春に羽化する中~大型種が多いアミメカワゲラ科のいくつかの種(ヒメカワゲラ属・コグサヒメカワゲラ属など)のことを指していると思われる。アミメカワゲラ科の幼虫は同じく大型になるカワゲラ科の幼虫よりも表皮が薄いため、魚視点で見ると食べやすくて食べ応えのある最高の餌であるに違いない。


クリップル(クリップルダン)…cripple(- dun)/羽化に失敗して飛び立つことができず、水面でもがいているカゲロウの亜成虫、またはその姿や動きを模したフライ(しかけ)のこと。「ドラウンド」とほぼ同じ状態。水面で長時間動くため魚の恰好の餌となる。


クロカワムシ(黒川虫)…ヒゲナガカワトビケラとチャバネヒゲナガカワトビケラの幼虫。黒くて大きく、各地で非常によくみられるため固有名詞化している。ナガレトビケラやカワゲラに比べると渓流魚の食いつきはイマイチという。


ストーンフライ…stonefly/カワゲラ。英名そのまま。


スピナー…spiner/原義はカゲロウの成虫(円を描くようにくるくると飛翔する)。しかし、実際にはその動きを模したフライ(しかけ)の名称として浸透しており、水中や水面で回転運動をすることで魚の気を引くように作られたブレードつきのルアーのことを指すのが一般的。


スペント(スペントダン)…spent(- dun)/水面に浮くカゲロウの亜成虫や、それに似た状態・挙動をする他の川虫の成虫。またはその姿や動きを模したフライ(しかけ)のこと。「クリップル」や「ドラウンド」と似た状態であり明確な定義はないが、"spent"(=疲れきった)の字義の通りほとんど動かないものや死んで間もないものを指すと思われる。


ダン…dun/カゲロウの亜成虫。成虫(スピナー)よりも飛翔力が低いため、自然下でも水面付近にいるものは川魚のいい餌となっている。詳しくは【用語集】ページの『亜成虫』を参照。


ドラウンド(ドラウンドダン)…drowned(- dun)/水面で溺れるカゲロウの亜成虫や、それに似た状態・挙動をする他の川虫の成虫。またはその姿や動きを模したフライ(しかけ)のこと。「クリップル」とほぼ同じ状態で、水面で長時間動くため魚の恰好の餌となる。


ニンフ…nymph/幼虫。日本語では昆虫の若齢期をすべて「幼虫」とひとくくりに呼ぶが、英語では蛹を作らない昆虫(不完全変態)の幼虫に"nymph"、作る昆虫(完全変態)の幼虫に"larva"の語彙をあてる。すなわち正確には、ニンフ=不完全変態の川虫の幼虫 となるが、蛹を作るトビケラの幼虫なども含め、日本のフライフィッシング業界では漠然と川虫の幼虫のことをニンフと総称する場面も少なからずある。


ハッチ…hatch/川虫の幼虫(または蛹)が羽化して水上に出てくること。釣り用語では完全に羽化のことを指す意味で定着しているが、原義は「孵化」であり、幼虫(または蛹)→成虫 ではなく 卵→幼虫 のことなので注意。


ピューパ…pupa/蛹。蛹を作る川虫は圧倒的にトビケラがメインなので、主にトビケラの蛹の意。


フローティング(フローティングニンフ)…floating(- nymph)/そのまま、浮かぶ幼虫。主に水面羽化をするカゲロウの羽化直前の様子、またはその姿や動きを模したフライ(しかけ)のこと。


ミッジ…midge/ユスリカの幼虫、またはその姿や動きを模したフライ(しかけ)のこと。かなり小型なので他の川虫やそれを模したフライ(しかけ)に比べて大きな魚の食いつきは劣るが、小魚狙いや管理釣り堀での数狙い(釣るサイズでなはく釣る数を狙う釣り方)では非常に有効な場面もあるよう。


メイフライ…mayfly/カワゲラ。英名そのまま。


ラーバ…larva/幼虫。「ニンフ」を参照。




管理人は完全に研究者サイドの出身なので釣り用語にはほとんど馴染みがなく、本リストを作るにあたって複数の釣りサイトやAIで下調べをしました。

渓流釣りのメインはあくまでも魚なので「釣り人が川虫を見る解像度は川虫屋が川虫を見るそれには及ばないだろう」と思いきや、さまざまな状態の川虫(とりわけ羽化前後に関するカゲロウ)を的確に示す語彙があって感動したことは言うまでもありません。

語彙の数が少ない北米・イヌイットの人々が雪に関する多数の語彙を有する例は有名ですが、まさにそれと似ていて、いかにプロのフライフィッシャーが川虫の挙動、特に魚が川虫を狙う羽化の瞬間を注意深く観察しているのか。そのことがよく表れています。

webやsns上で川虫の情報を多く発信している方の中にはフライフィッシング出身の方もいるので、同じく自然の恵みを享受する者同士、楽しく情報交換や交流ができたらいいな、とも思います。

釣りをされる方、間違いや「これもあるぞ!」などあれば遠慮なくご指摘ください。

 
 
 

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