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【ヤマトビケラ科 Glossosomatidae
 

​礫でドーム状(亀の甲羅型)の巣を作る小型のトビケラです。図鑑的には

​  ①中胸・後胸はキチン化せず膜質

  ②触角は短く観察しにくい

  ③腹部第9節背面にキチン板がある

  ④可携巣はもたず、前胸腹板突起はない(トビケラ科との区別点)

  ⑤尾肢は短い(ナガレトビケラ科との区別点)

​以上の5点を順番に観察することで同定されます。巣の形状が独特であるため、慣れれば巣だけでも科レベルまで推定することができます(確実な同定には幼虫本体の観察が必須)。幼虫は小さくずんぐりした体型のイモムシ型で、一見するとドングリなどからよく出てくるゾウムシの幼虫に雰囲気がそっくりです。


下位分類(国産既知種のリスト)


  コヤマトビケラ属 Agapetus
    ・ヒメナガレトビケラ Agapetus annulicornis (Matsumura, 1907)
    ・ブドウコヤマトビケラ Agapetus budoensis ​Kobayashi, 1982
    ・ヒエイコヤマトビケラ Agapetus hieianus (Tsuda, 1942)
    ・キタコヤマトビケラ Agapetus inaequispinosus Schmid, 1970
    ・コマコヤマトビケラ Agapetus komanus (Tsuda, 1942)
    ・ヤマトコヤマトビケラ Agapetus sibiricus Martynov, 1918
    ・ヤセコヤマトビケラ Agapetus yasensis (Tsuda, 1942)
  コハクヤマトビケラ属 Electragapetus
​    ・クリコハクヤマトビケラ Electragapetus kuriensis Kobayashi, 1987
    ・マヤコハクヤマトビケラ Electragapetus mayaensis ​Kobayashi, 1982
    ・ツダコハクヤマトビケラ Electragapetus tsudai ​Ross, 1951
    ・ウチダコハクヤマトビケラ Electragapetus uchidai ​Kobayashi, 1982
  ヤマトビケラ属 Glossosoma
    ・アルタイヤマトビケラ Glossosoma altaicum (Martynov, 1914)
    ・エゾヤマトビケラ Glossosoma dulkejti (Martynov, 1934)
    ・ニッポンヤマトビケラ Glossosoma hospitum ​(Tsuda, 1940)
    ・ヤマトヤマトビケラ Glossosoma japonicum ​Kobayashi, 1972
    ・(和名未定)Glossosoma neffi ​Arefina, 2000
    ・ニチンカタヤマトビケラ Glossosoma nichinkata Schmid, 1971
    ・サドヤマトビケラ Glossosoma sadoensis ​Kobayashi, 1982
    ・スミタヤマトビケラ Glossosoma sumitaense ​Kobayashi, 1982
    ・アキタヤマトビケラ Glossosoma uogatanum ​Kobayashi, 1982
    ・イノプスヤマトビケラ Glossosoma ussuricum (Martynov, 1934)
    ・ヤマノウチヤマトビケラ Glossosoma yamanouchii ​Kuhara, 2008
  ケシヤマトビケラ属 Padunia
    ・タカネケシヤマトビケラ Padunia alpina Kagaya & Nozaki, 1998
    ・エゾケシヤマトビケラ Padunia forcipata Martynov, 1934
    ・(和名未定)Padunia introfexa Nishimoto & Nozaki 2007
    ・(和名未定)Padunia obpyriformis Nishimoto & Nozaki 2007
    ・(和名未定)Padunia pallida Nishimoto & Nozaki 2007
    ・(和名未定)Padunia perparva Nishimoto & Nozaki 2007
    ・(和名未定)Padunia ramifera Nishimoto & Nozaki 2007
    ・(和名未定)Padunia rectangularis Nishimoto & Nozaki 2007
  川虫図鑑 成虫編(丸山・花田 編,2016)、
日本産トビケラのリスト (外部リンク/2024年9月閲覧に基づく)

​以上、4属30種が知られているほか、複数の未記載種がいると考えられています。過半数の種が1950年以降に記載されており、分類学的な整理が遅れていた仲間なので、今後も新種の記載や属の新設などが行われると予想されます。

 


フォトギャラリー

終齢/雌雄不明

​2020.04.12 山形県

終齢(?)/雌雄不明

​2021.06.05 宮城県

亜終齢(?)/雌雄不明

​2024.09.07 山形県

――――――――――――――――――【 ヤマトビケラ科たち(それぞれ属・種は不明)】――――――――――――――――――

観察した環境:山地渓流 記録済みの地域:山形 幼虫の特徴:(種レベルまで同定できていないため割愛) 季節性・化性:(種レベルまで同定できていないため割愛)

観察した環境:平地渓流 記録済みの地域:宮城 幼虫の特徴:(種レベルまで同定できていないため割愛) 季節性・化性:(種レベルまで同定できていないため割愛)

観察した環境:山地渓流 記録済みの地域:山形 幼虫の特徴:(種レベルまで同定できていないため割愛) 季節性・化性:(種レベルまで同定できていないため割愛)

終齢/雌雄不明

​2019.06.01 宮城県

【 ヤマトビケラ科の一種 】

観察した環境:山地渓流 記録済みの地域:宮城 幼虫の特徴:(種レベルまで同定できていないため割愛) 季節性・化性:(種レベルまで同定できていないため割愛)


観察メモ
 ・小型種群であり、巣の大きさは長径10 mm程度、幼虫は終齢でも6-9 mm程度です。
 ・巣の内側の補強(口から吐く糸で固める)はやや弱く、無機物を巣材に用いるケーストビケラの中では、巣の強
  度が低い部類です。巣を傷めずに幼虫を物理的に引っ張り出すにはコツがいりますが、即死させない程度の刺激
  性の液体(炭酸水や50%程度のエタノールなど)に入れると幼虫が異常を感知して巣から飛び出てくるため巣
  を傷めずに幼虫を取り出すことができます(炭酸水や薄いエタノールでも長時間入れると死ぬので注意。アセト
  ンやホルマリンなどに入れると巣から飛び出す間もなく即死するため、幼虫を取り出す際に巣を破壊せざるを得
  なかったり幼虫を損傷してしまうことがあります)。

 ・成虫のみで記載されている種や幼・成虫の紐付けがされていない種も多く、身近で生息量の多い種であっても詳
  細不明のものもおり、幼虫時点で種同定するのは困難です(成虫であってもかなり難しいです)。無理に科・種
  レベルまで同定しないほうが安全です。
 ・季節性・化性に関して種レベルで解明されているものはごく一部ですが、成虫は春~秋まで長い期間見つかりま
  す。先行研究事例は少ないですが、1年1化または2化の種が多いようです。

 

本科の基本的な胸部背面のキチン板配列

赤:前胸、黄:中胸、青:後胸

​前胸のみ広くキチン化しており、

中・後胸背面はすべて膜質です。

​巣の下面(左)と側面(右)(上画像一枚目の個体)

巣の開口部は前面ではなく下面にあり、左写真のように、巣の下面には頭を出す開口部(上)のほかに腹端を出す

開口部(下)も設けられており、これも本科の特徴です。巣は側面および上面が粒の大きな礫で構成されて

いますが、腹面の中央部の巣材には細礫や砂が用いられます。

​蛹化のために大礫の上部に集まった幼虫たち(2021.03.27 宮城県)

幼虫は蛹になる前に大礫の水面直下の部分に集まり巣の中で蛹化しますが、水流や礫表面の安定性(?)にこだわりがあるようで、

特定の礫でまとまって観察されることがあります(画像は撮影しやすいように礫を水上に持ち上げたところ)。

 


成虫(未撮影)
 
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