An Artless Riverside 川虫館
【ムネカクトビケラ科 Ecnomidae】
中型ないしやや小型のトビケラです。形態的な雰囲気はイワトビケラ科・カワトビケラ科に似ますが、中胸・後胸背面全体が(薄いながらも)キチン化することが2科と決定的に異なります。胸部背面が広くキチン化するという点ではシマトビケラ科と同じですが、本科幼虫の腹部各節にはふさ状のえらがありません。
ムネカクトビケラEcnomus tenellus ただ一種が国内に広く分布しており他種は分布が限られていたり珍しかったりするようですが、幼虫の外部形態で確実に種同定をすることは2024年現在不可能とされています。
下位分類(国産既知種のリスト)
ムネカクトビケラ属 Ecnomus
・ホッカイムネカクトビケラ Ecnomus hokkaidensis Kuhara, 2016
・トゲムネカクトビケラ Ecnomus japonicus Fischer, 1970
・サキシマムネカクトビケラ Ecnomus sakishimensis Kuhara, 2016
・ムネカクトビケラ Ecnomus tenellus (Rambur, 1842)
・ヤマシロムネカクトビケラ Ecnomus yamashironis Tsuda, 1942
(日本産トビケラのリスト (外部リンク/2024年11月閲覧)に基づく)
以上、1属5種が知られています。従来はイワトビケラ科Polycentropodidae に含まれていましたが、2024年現在は独立科として扱うことが主流になっています。南半球を中心に分布するグループとされていて、国内からはムネカクトビケラ属の1属のみが知られます。
フォトギャラリー
終齢(?)/雌雄不明(液浸標本)
2024.07.29 福島県
齢不詳/雌雄不明(液浸標本)
2024.08.07 福島県
―――――――――【 ムネカクトビケラ属の一種 】―――――――――
観覧した環境:平地流・池 観察した地域:福島 幼虫の特徴:(種レベルの形態的な特徴は未解明) 季節性・化性:詳細不明
観察メモ
・腹部第2-7節は節の幅と長さがほぼ等しく、背面から見ると雰囲気が似ているシマトビケラ科と比べると腹部がかなり長く見えます(例えるならダックスフントのような
印象)。
・2024年現在、外部形態を用いて幼虫を種レベルで同定することは不可能とされますが、SNS上に散見される画像を見る限り頭部の斑紋が明らかに異なる種もいるようで
研究が進めば同定が可能になるかもしれません。
・画像は液浸標本のものですが、生時は全体的に透明感があり腹部全体が薄く緑色を帯びる個体が多いようです。
・エタノールやホルマリン等で固定すると腹部の透明感や艶感は失われますが、頭・胸部の斑紋はよく保存されるため観察はやりやすいです。なおイワトビケラ科同様に
前脚亜基節前方の棘はアングルがよくないと頭部下面の輪郭に重なるなどして観察しにくいため、これを見る際には前胸と中胸の間で虫体を切断して腹面から観察する
と良いです。
頭部(左個体)
目の周囲および頭楯の正中線上にパンダ様の淡色斑があり、褐色部には小さな淡色斑が散ります。
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頭・胸部側面
前脚亜基節のトゲ(黄矢印)
尾爪
尾爪の内側に大小の非常に細かい内歯が
30本以上列生します。