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【トビケラ科 Phryganeidae
 

 

​植物枯死組織で巣を作る中~大型のトビケラです。図鑑的には、

​  ①前胸はキチン化し後胸は膜質(中胸のキチン板の有無は種ごとに異なる)

  ②触角は短く観察しにくい

  ③腹部第9節背面にキチン板がある

  ④可携巣は植物質で、前胸には腹板突起、腹部第一節には肉質隆起がある(ヤマトビケラ科・ナガレトビケラ科との識別点)

​以上の4点を順番に観察することで同定されます。ただし③以降の検索で分岐する各科のうち可携巣をもつトビケラは中~小型種であるため、亜終齢~終齢サイズまで成長した本科の幼虫であれば、慣れれば細部を観察せずとも本科だと分かります。同じく大型になるエグリトビケラ科の一部と紛らわしいですが、エグリトビケラ科の幼虫は中胸背面の全面がキチン板で覆われます。


下位分類(国産既知種のリスト)


  ウンモントビケラ属 Agrypnia
    ・セジロウンモントビケラ Agrypnia acristata Wiggins, 1998
    ・マガリウンモントビケラ Agrypnia incurvata Wiggins, 1998
    ・タイリクウンモントビケラ Agrypnia picta Kolenati, 1848
    ・ウンモントビケラ Agrypnia sordida (McLachlan, 1871)
    ・ウルマーウンモントビケラ Agrypnia ulmeri (Martynov, 1909)
  ムラサキトビケラ属 Eubasilissa
    ・オオムラサキトビケラ Eubasilissa imperialis (Nakahara, 1915)
    ・ムラサキトビケラ Eubasilissa regina (McLachlan, 1871)
  ヒメアミメトビケラ属 Hagenella
    ・ヒメアミメトビケラ Hagenella apicalis (Matsumura,1904)
  ヤチトビケラ属 Oligostomis
    ・ヤチトビケラ Oligostomis wigginsi Nishimoto & Kawase, 2005
  アミメトビケラ属 Oligotricha
    ・アミメトビケラ Oligotricha fluvipes (Matsumura, 1904)
    ・キタアミメトビケラ Oligotricha hybridoides Wiggins & Kuwayama, 1971
    ・フタスジトビケラ Oligotricha kawamurai (Iwata, 1927)
    ・ヤチアミメトビケラ Oligotricha spicata Wiggins & Kuwayama, 1957
  ツマグロトビケラ属 Phryganea
    ・ツマグロトビケラ Phryganea japonica McLachlan, 1866
  ゴマフトビケラ属 Semblis
    ・ゴマフトビケラ Semblis melaleuca (McLachlan, 1871)
    ・カラフトゴマフトビケラ Semblis phalaenoides (Linnaeus, 1758)​
  川虫図鑑 成虫編(丸山・花田 編,2016)、 日本産トビケラのリスト (外部リンク/2024年12月閲覧)基づく)

​以上、7属18種が知られています。ヤチトビケラ属は国内では2000年代になってから見つかりましたが、記録はまだ少数です。

 


フォトギャラリー

3齢(?)/雌雄不明

​2024.09.04 秋田県

終齢(?)/雌雄不明(巣が下部1/4ほど欠損)

​2022.12.23 宮城県

―――――――――――――――――――――【 ムラサキトビケラ 】―――――――――――――――――――――

生息環境:山地渓流・平地渓流・平地流・水路などに接続する池や沼。山地から平地まで広く生息するが、里山の水路のような小規模な流れを好む傾向が強い。水底に十分量のリターが堆積している環境であればU字溝に多産することもある。 記録済みの地域:秋田・山形・宮城・新潟 幼虫の特徴:大きく切り取った落葉片を環状に巻き、それを4~5段ほど重ねた巣。巣は容易に屈曲し柔軟。ステージ中盤以降の幼虫のものであれば巣だけでも本種の幼虫と分かる。非常に大型で、国内最大のトビケラ。 季節性・化性:成虫は晩春~秋まで長くみられ、地域によっては明確な二峰性の発生消長を示すという/1年1~2世代

亜終齢(?)/雌雄不明

​2024.06.05 山形県

齢不詳/雌雄不明

​2018.12.03 新潟県

齢不詳/雌雄不明

(脱皮直後のため外骨格が白っぽい)

​2018.11.08 新潟県

終齢(?)/雌雄不明

​2024.07.22 北海道

【 ゴマフトビケラ 】

【 アミメトビケラ属の一種(?) 】

―――【 アミメトビケラ属たち(それぞれ種は不明)】―――

生息環境:樹林に囲まれた寒冷地の池・沼やそれらに接続する水路 記録済みの地域:山形 幼虫の特徴:属レベルの識別点は下の表を参照 季節性・化性:観察例は多くないが、成虫は晩春~夏にみられる/1年1世代(?)

観察した環境:丘陵地を流れる山地渓流のよどみ 記録済みの地域:新潟 幼虫の特徴:種レベルで同定できてきないため割愛(属レベルの識別点は下の表を参照)。 季節性・化性:(種レベルで同定できてきないため割愛)

観察した環境:平地渓流のよどみ 記録済みの地域:新潟 幼虫の特徴:種レベルで同定できてきないため割愛(属レベルの識別点は下の表を参照)。 季節性・化性:(種レベルで同定できてきないため割愛)

観察した環境:高層湿原の池塘 記録済みの地域:北海道 幼虫の特徴:種レベルで同定できてきないため割愛(属レベルの識別点は下の表を参照)。 季節性・化性:(種レベルで同定できてきないため割愛)


観察メモ
 ・巣材の種類は属によってさまざまですが、広葉樹の落葉片で強度の低い巣を作るグループ(ウンモントビケラ属・ムラサキトビケラ属・ゴマフトビケラ属など)の幼虫
  は驚くとすぐに巣から飛び出てしまうことがあります(特にムラサキトビケラ)。見慣れないうちは巣と幼虫とがセットになっていないと同定が難航することがあるた
  め注意です。
 ・前脚の腿節は中脚・後脚に比べて太く、脛節・跗節の構造とあわせて鎌状になっています。このよく発達した前脚は獲物の捕食に役立っていると考えられます。同時に
  大顎も発達していて、飼育下ではピンセットや割り橋に噛みついてくることもあります。生きた幼虫を運搬する際には、共食い防止のために個別の容器に入れることを
​  推奨します。
 ・液浸標本にした際の変形・退色等はあまりなく標本でも細部を観察しやすいですが、肉食であるためか体内の脂分が多くエタノールなどの保存液を汚します。

 

表:トビケラ科 主要各属の特徴

本科の基本的な胸部背面のキチン板配列

​(画像はムラサキトビケラ)

赤:前胸、黄:中胸、青:後胸、

ピンク矢印:腹部第一節側面の肉質隆起

頭部(ムラサキトビケラ属)

​頭部のV字斑は後頭部でくっつきます(赤矢印)

頭部(ゴマフトビケラ属)

​頭部のV字斑は後頭部でわずかに離れ、

完全にくっつくことはありません(黄矢印)

鎌状に発達した前脚

(画像はムラサキトビケラ)

​腿節は太短く、跗節は針状に尖っていて

小昆虫の捕獲に適した形状になっています。

ピンセットに噛みつく幼虫

(画像はムラサキトビケラ)

​性格が獰猛な種は捕食だけでなく防御の際にも

​噛みつき行動をすることがあります。

生息環境

生息環境例(宮城県/6月)

​ムラサキトビケラなどが特に好む水路状のゆるい流れ

生息環境例(山形県/6月)

​ゴマフトビケラ属やアミメトビケラ属などの止水性好寒種が

生息するブナ林に囲まれた止水域


成虫【準備中…】
 
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