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【クダトビケラ科 Psychomyiidae】
 

​礫や護岸などの表面に独特の形状の巣を作る小型トビケラです。図鑑的には、

  ①胸は前胸のみがキチン化し中胸・後胸は全体が膜質

  ②腹部第9節背面にキチン板がなく、後脚が他の脚よりも長く発達することはない

  ③上唇はキチン質で透明の膜質でない(カワトビケラ科との区別点)

  ④小型で、前脚亜基節先端がへら状に伸びる(キブネクダトビケラ科・イワトビケラ科との区別点)

以上の4点を順に確認することで同定できます。


下位分類(国産既知種のリスト)


  オオクダトビケラ属 Eoneureclipsis
    ・オオクダトビケラ Eoneureclipsis montana Torii & Nishimoto, 2011
    ・オキナワオオクダトビケラ Eoneureclipsis okinawaensis Torii & Nishimoto, 2011
    ・シコクオオクダトビケラ Eoneureclipsis shikokuensis Torii and Nishimoto, 2011
    ・ヤエヤマオオクダトビケラ Eoneureclipsis yaeyamaensis Torii & Nishimoto, 2011
  キタクダトビケラ属 Lype
    ・キタクダトビケラ Lype excisa Mey, 1991
  カキヅメクダトビケラ属 Metalype
    ・カギヅメクダトビケラ Metalype uncatissima (Botosaneanu, 1970)
  ヒメクダトビケラ属 Paduniella
    ・アマミヒメクダトビケラ Paduniella amamiensis Nishimoto, 2011
    ・タイリクヒメクダトビケラ Paduniella communis Li & Morse, 1997 
    ・ホウライヒメクダトビケラ Paduniella horaiensis Nishimoto, 2011 
    ・ヒメクダトビケラ Paduniella tanidai Nishimoto, 2011 
    ・ウラルヒメクダトビケラ Paduniella uralensis Martynov, 1914 
  クダトビケラ属 Psychomyia
    ・ウルマークダトビケラ Psychomyia acutipennis (Ulmer, 1908)
    ・トゲクダトビケラ Psychomyia armata Schmid, 1964
    ・クチバシクダトビケラ Psychomyia billnis (Kobayashi, 1987)
    ・(和名未定)Psychomyia curvicacumen Nishimoto, 2020 
    ・キイロクダトビケラ Psychomyia flavida Hagen, 1861
    ・(和名未定)Psychomyia incisa Nishimoto, 2020 
    ・モリシタクダトビケラ Psychomyia morisitai Tsuda, 1942
    ・ニッポンクダトビケラ Psychomyia nipponica Tsuda, 1942
    ・(和名未定)Psychomyia serrata Nishimoto, 2020 
    ・(和名未定)Psychomyia pseudonipponica Nishimoto, 2020 
    ・(和名未定)Psychomyia quadridentata Nishimoto, 2020 
    ・ウスグロヒメトビケラ Psychomyia usuguronis (Matsumura, 1931)
  ホソクダトビケラ属 Tinodes
    ・アオホソクダトビケラ Tinodes aonensis Kobayahsi, 1984
    ・アシガラクダトビケラ Tinodes ashigaranis Kobayashi, 1971
    ・ヒガシヤマクダトビケラ Tinodes higashiyamanus Tsuda, 1942
    ・ミヤコクダトビケラ Tinodes miyakonis Tsuda, 1942
    ・(和名未定)Tinodes sauteri Ulmer, 1908

  日本産トビケラのリスト (外部リンク/2024年9月閲覧)に基づく) 

​以上、6属28種が知られているほか複数の未記載種が存在するとされます。小型種かつ採集効率が悪い種が少なくないため国内種の分類の整理は他科に遅れをとっていましたが、国内では2010年以降複数の種が記載され、既知の種数が倍増しました。


フォトギャラリー

終齢(?)/雌雄不明

​2024.10.05 山形県

【​ヒメクダトビケラ属の一種①】

観察した環境:源流の細い沢に続くU字溝の内壁 記録済みの地域:山形 幼虫の特徴:(種レベルまで同定できていないため割愛) 季節性・化性:詳細不明/1年2化以上?

終齢(?)/雌雄不明(右は棲管とのサイズ比較)

​2024.10.14 新潟県

――――【​ヒメクダトビケラ属の一種②】―――――――

観察した環境:平地渓流の岸に面した水が滴る岩盤 記録済みの地域:新潟 幼虫の特徴:(種レベルまで同定できていないため割愛) 季節性・化性:詳細不明/1年2化以上?

齢不詳/雌雄不明

​2024.12.16 宮城県

【​ヒメクダトビケラ属の一種③】

観察した環境:染み出し 記録済みの地域:宮城 幼虫の特徴:(種レベルまで同定できていないため割愛) 季節性・化性:詳細不明/1年2化以上?


観察メモ
 ・小さいためなかなか観察しにくいのですが、頭・胸部に対して腹部が長い種が多く胴長な印象を受けます。
 ・普段は固着巣の中に隠れているため、自由水中に入れると落ち着きなく動き回ります。幼虫の動きはトビケラ目の中では敏捷なほうで、隠れ場を探して水中を這う挙動
  はシャクトリムシの動きを早送りしたようです。

 

本科胸部背面のキチン板配列

(ヒメクダトビケラ属の一種②)

赤:前胸、黄:中胸、青:後胸

中・後胸は全くキチン化しません

頭部下面(ヒメクダトビケラ属の一種①)

前方咽頭板は小さく目立たず、そのかわりに

下唇下面の一対のキチン板が明瞭です。

​この種のキチン板は横長の台形ですが、属や

種ごとに形状がやや異なります。

前脚亜基節(ヒメクダトビケラ属の一種②)

​前脚亜基節先端がへら状に突出します。

​イワトビケラ科・ムネカクトビケラ科ではこの

先端が尖り、ナガレトビケラ科はこの先端から長い

剛毛が生えるという違いがあります。

ヒメクダトビケラ属の一種①の棲管

​水深のごく浅い水路の内壁で、水上に長く伸びる棲管が多くみられました。

この中から幼虫を傷つけずに採集するのは難しく

(そもそも幼虫が入っていないものもある)、この時は

20本以上の棲管から2頭しか幼虫を得ることができませんでした。

ヒメクダトビケラ属の一種③の棲管

​​染み出しの岩盤面に非常に高密度でみられた棲管。

こういった環境で幼虫を採集する際には、細くて丈夫な木の枝・草の茎などで

少しずつ棲管を壊していくとよいです。どうしても一定の確率で中に隠れている

幼虫を損傷させてしまうのですが、多少は割り切るしかありません。


成虫【準備中…】
 
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