An Artless Riverside 川虫館
【脈翅(アミメカゲロウ)目 Neuroptera】
和名のせいでカゲロウの仲間だと思われがちですが、カゲロウ目とは全く異なるグループです。
過半数の幼虫は陸生で、代表的なものでは「アリジゴク」として知られるウスバカゲロウや緑色で可愛いクサカゲロウ、珍虫カマキリモドキなどがありますが、幼虫が水辺を利用するものがいます。国内ではミズカゲロウ科・シロカゲロウ科・ヒロバカゲロウ科の3科が水生・半水生のグループとして報告されており、このうち流水域に生息するシロカゲロウ科・ヒロバカゲロウ科の2科をここでは紹介します(ミズカゲロウ科は止水性)。国内では、シロカゲロウ科からはシロカゲロウ属のみ、ヒロバカゲロウ科からは3つの属が見つかっているようです。ただでさえマイナーなグループですが、山奥の水質のよい渓流域を主な生息場としており一般に生息密度も低いため、生き物好きでも幼虫を見たことがある人は非常に少ないと思われます。生態学的な研究も分類学的な研究も遅れており、幼虫を種レベルで同定することは2025年現在、基本的に困難です。
従来はヘビトンボ類(ヘビトンボとセンブリ)もこのアミメカゲロウ目に含まれていましたが、近年はヘビトンボ目を別目として扱う風潮が主流です。
フォトギャラリー

終齢(?)/雌雄不明
2024.06.07 山形県

終齢(?)/雌雄不明
2018.11.16 新潟県
――――――――【 シロカゲロウ属の一種 】――――――――
観察した環境:源流 記録済みの地域:山形・新潟(同種かどうかは不明) 幼虫の特徴:頭部はオレンジ、腹部は淡黄色~白。頭部は縦長でクワガタのような大顎をもつ。腹部は柔軟、伸縮性に富む。幼虫での種レベルの同定は困難。 季節性・化性:詳細不明


終齢(?)/雌雄不明
2023.11.25 山形県
―――――【 ヒロバカゲロウ科の一種(属・種不明)】―――――
観察した環境:源流部のU字溝内壁に生えるコケの塊の内部 記録済みの地域:山形・宮城(同種かどうかは不明) 幼虫の特徴:暗色で胸部・腹部は全体的に弾力のある膜質。頭部前方に細い大顎がまっすぐ伸びる。幼虫不明の種がほとんどで、属・種レベルの同定は困難。 季節性・化性:詳細不明
観察メモ
・日頃から川虫の観察をしていてもなかなか目にする機会のないレア川虫です。
・シロカゲロウは源流部の礫の隙間からまれに見つかります。ヒロバカゲロウは複数の属がいるため属・種によって環境嗜好が異なっている可能性がありますが、webの
情報を見ると、山岳部の湧水や源流・渓流域の水ぎわで主に見つかっているようです。
・大顎に特徴があり、より小型の水生生物を襲って食べる肉食性ですが、サイズがそれほど大きくないためヘビトンボのような迫力はありません。
・刺激を加えると画像のように体を丸めます(しかしすぐに動き出します)。

シロカゲロウ属の一種
獲物をはさむ形状の大顎です。推測ですが、小さな水生のミミズや
ユスリカの幼虫、カワゲラの若齢個体などを食べているのではないかと思います、

ヒロバカゲロウ科の一種
この顎でどうやって狩りをするのか心配になりますが、アミメカゲロウ目の幼虫は
体外消化をすることが知られており、おそらく動きの緩慢な獲物に顎を突き刺して
消化液を送り込み、溶けた体液を吸うのだと思われます。