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【アシエダトビケラ科 Calamoceratidae】
 

 

​属ごとにそれぞれ特徴的な可携巣を作る中型のトビケラです。上唇前縁に16本程度の長い毛が並ぶことで他科の幼虫と区別されますが(他科の幼虫の上唇の剛毛は0~10本以下)、コバントビケラ属とクチキトビケラに関してはこれを見るまでもなく、可携巣の形状で容易に同定できます。後脚が前脚・中脚の倍ほどの長さに発達することも特徴です(ただしこれはヒゲナガトビケラ科やホソバトビケラ科なども同様)。


下位分類(国産既知種のリスト)


  コバントビケラ属 Anisocentropus
    ・コバントビケラ Anisocentropus kawamurai (Iwata, 1927)
    ・ニシキコバントビケラ Anisocentropus magnificus Ulmer, 1907 
    ・ウスイロコバントビケラ Anisocentropus pallidus (Martynov, 1935) 
  クチキトビケラ属 Ganonema
    ・クチキトビケラ Ganonema uchidai Iwata, 1930
  アシエダトビケラ属 Georgium
    ・ビワアシエダトビケラ Georgium japonicum (Ulmer, 1905)
  川虫図鑑 成虫編(丸山・花田 編,2016)に基づく)

​以上、3属5種が知られています。
各地で広く一般的にみられるのはコバントビケラ A. kawamurai のみで、他は分布が局所的です。ニシキコバントビケラは八重山諸島からのみ見つかっています。
 


フォトギャラリー

終齢/雌雄不明(巣:左(背面)、右(腹面))

​2020.02.03 山形県

終齢(?)/雌雄不明(巣:左(背面)、右(腹面))

​2020.07.03 宮城県

――――――――――――――――――――【 コバントビケラ 】――――――――――――――――――――

生息環境:山地渓流・平地渓流・平地流の緩流部や池・沼。広葉樹林の落葉が豊富に供給される水域に生息する(上画像右側の個体は巣の背面にイネ科の大型草本の枯葉を使っているが、レアケース)。 記録済みの地域:山形・宮城・新潟 幼虫の特徴:楕円形に切り取った大小2枚の落葉片を背腹につなぎ合わせた特徴的な巣をもつ(属の特徴)。同属他種と識別する際には後脚腿節の褐色のバンドのパターンを見るとよい。 季節性・化性:南東北では早春期と夏季に後期幼虫が多く得られるため、少なくとも年2化している可能性が高い。/1年2世代以上


観察メモ
 ・コバントビケラ属は切り取った2枚の落ち葉片、クチキトビケラは小枝、ビワアシエダトビケラは粗く切り出したアシの葉・茎をそれぞれ巣材としており、国産のケー
  ストビケラの中で最も制作コストの低いシンプルな巣を作るグループです。特にクチキトビケラは内部が腐って軟化したちょうどいいサイズの小枝をくり抜いてそのま
  ま巣とすることで知られ、パーツを一切組み合わせずに作られる可携巣は世界のトビケラの中でも特異です。
 ・巣の構造がシンプルであることからケーストビケラの中では祖先的なグループなのではないかと考えられていたこともあったようですが、DNA解析の結果、決して原始
  的なトビケラではないことが判明しています。シンプルな巣は進化の過程で試行錯誤を経て獲得された省エネ生活術なのでしょう。
 ・クチキトビケラやビワアシエダトビケラは主に関東・西日本に分布しているようで、未観察です。

 

本科胸部背面のキチン板配列

赤:前胸、黄:中胸、青:後胸、

ピンク矢印:腹部第一節背面の肉質隆起。

​前・中胸背面は広くキチン板に覆われます。

後胸背面にも小さなキチン板があります

目立ちません。。

巣を背負って歩く幼虫(コバントビケラ)

​コバントビケラの幼虫は巣の形状が独特なので

布団に入ったまま布団を引きずって移動しているようにも見え、

​なかなか愛嬌があります。

幼虫 頭・胸部​(コバントビケラ)

幼虫 正面​(コバントビケラ)


成虫(未観察)
 
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