An Artless Riverside 川虫館
【カワトビケラ科 Philopotamidae】
白い体の中型のトビケラです。図鑑的には、
①可携巣をもたず胸部背面は前胸のみがキチン化し、中胸・後胸は全体が膜質
②腹部第9節背面にキチン板はない
③上唇は膜質
以上の3点を確認することで同定されます。特に③の膜質の上唇は本科独特の特徴です。幼虫は各種が酷似しており、肉眼での確実な同定は相当に熟練しない限り科レベルが限界です。
下位分類(国産既知種のリスト)
コタニガワトビケラ属 Chimarra
・ツダコタニガワトビケラ Chimarra tsudai Ross, 1956
タニガワトビケラ属 Dolophilodes
・サキボソタニガワトビケラ(旧タニガワトビケラ属DA)
Dolophilodes angustata Kuhara, 2005
・ミミタニガワトビケラ Dolophilodes auriculata Martynov, 1933
・ババタニガワトビケラ Dolophilodes babai (Kobayashi, 1980)
・コンマタニガワトビケラ Dolophilodes commata (Kobayashi, 1980)
・サキブトタニガワトビケラ Dolophilodes dilatata Kuhara, 2005
・イロタニガワトビケラ(旧タニガワトビケラ属DD)
Dolophilodes iroensis (Kobayashi, 1980)
・タニガワトビケラ(旧タニガワトビケラ属DB)
Dolophilodes japonica (Banks, 1906)
・ノムギタニガワトビケラ Dolophilodes nomugiensis (Kobayashi, 1980)
・シンボタニガワトビケラ Dolophilodes shinboensis (Kobayashi, 1980)
トゲタニガワトビケラ属 Kisaura
・(和名未定)Kisaura ashizuriensis Kuhara, 2019
・キタタニガワトビケラ Kisaura borealis (Kuhara, 1999)
・(和名未定)Kisaura brevis Kuhara, 2019
・(和名未定)Kisaura curvispina Kuhara, 2019
・フタマタトゲタニガワトビケラ Kisaura dichotoma Kuhara & Arefina, 2004
・ハットリタニガワトビケラ Kisaura hattorii (Kuhara, 1999)
・キソタニガワトビケラ Kisaura kisoensis (Tsuda, 1939)
・ミナカワトゲタニガワトビケラ Kisaura minakawai Arefina, 2005
・(和名未定)Kisaura niitakaensis (Kobayashi, 1973)
・ノザキタニガワトビケラ Kisaura nozakii (Kuhara, 1999)
・ツダタニガワトビケラ Kisaura tsudai (Botosaneanu, 1970)
ヒメタニガワトビケラ属 Wormaldia
・アマミヒメタニガワトビケラ Wormaldia amamiensis Kuhara, 2016
・トッキヒメタニガワトビケラ Wormaldia apophysis Kuhara, 2016
・リュウコツヒメタニガワトビケラ Wormaldia carinata (Schmid, 1991)
・フジノタニガワトビケラ Wormaldia fujinoensis Kobayashi, 1980
・イシガキヒメタニガワトビケラ Wormaldia ishigakiensis Kuhara, 2016
・イトウヒメタニガワトビケラ Wormaldia itoae Kuhara, 2016
・カドワキタニガワトビケラ Wormaldia kadowakii Kobayashi, 1980
・ナガノタニガワトビケラ Wormaldia kisoensis (Tsuda, 1942)
・ナベワリタニガワトビケラ Wormaldia nabewarina Kobayashi, 1969
・ニイタニガワトビケラ Wormaldia niiensis Kobayashi, 1985
・オキナワヒメタニガワトビケラ Wormaldia okinawaensis Kuhara, 2016
・ミジカオタニガワトビケラ Wormaldia rara (Kobayashi, 1959)
・スムハラタニガワトビケラ Wormaldia sumuharana Kobayashi, 1980
・ヤネヒメタニガワトビケラ Wormaldia tectum Kuhara, 2016
・ウオヌマタニガワトビケラ Wormaldia uonumana Kobayashi, 1980
・ヤクタニガワトビケラ Wormaldia yakuensis Kobayashi, 1980
・(和名未定:旧タニガワトビケラ属DC)Wormaldia sp.(既知の未記載種)
(川虫図鑑 成虫編(丸山・花田 編,2016)、日本産トビケラのリスト
(外部リンク/2024年9月閲覧)に基づく)
以上、4属38種が知られています。2010年以降に下位分類の整理や複数の種の記載がなされており国内種の全容がようやく判明してきたグループですが、分類の再検討が望まれる種群もおり一部は混乱が続いています。国内の種数はヒゲナガトビケラ科やナガレトビケラ科に及びませんが、世界的にはきわめて多くの種数を擁する巨大なトビケラのグループです。
フォトギャラリー


終齢/雌雄不明
2026.03.08 群馬県
―――――――【 サキボソタニガワトビケラ 】―――――――
生息環境:染み出し・飛沫帯 記録済みの地域:群馬 幼虫の特徴:幼虫形態を肉眼で見て種レベルの同定をするのは困難。大顎形状はページ下部の画像を参照。ただし、染み出し環境に袋をぶら下げるタイプの巣を作る本科幼虫は本種であることが多いとされる。 季節性・化性:春に羽化/1年1化と推測されるが詳細不明

齢不詳/雌雄不明
2026.03.23 山形県
【 ミミタニガワトビケラ 】
観察した環境:源流 記録済みの地域:山形 幼虫の特徴:幼虫形態を肉眼で見て種レベルの同定をするのは困難。頭部前縁の輪郭は左右対称で平滑。大顎形状はページ下部の画像を参照。 季節性・化性:春に羽化/1年1化と推測されるが詳細不明

4齢(?)/雌雄不明
2024.11.28 宮城県
【 タニガワトビケラ(?) 】
観察した環境:源流・山地渓流 記録済みの地域:山形・新潟 幼虫の特徴:幼虫形態を肉眼で見て種レベルの同定をするのは困難。頭部前縁は弱く歪んでおり、左側が右側よりわずかに大きく膨らむ。よく似た別種がいるため種名の断定は避けた。 季節性・化性:春に羽化/1年1化と推測されるが詳細不明

終齢(?)/雌雄不明
2018.12.21 新潟県
【 タニガワトビケラ(?) 】

終齢(?)/雌雄不明
2021.03.10 山形県

蛹/雌雄不明
2021.03.10 山形県
―――――――【 タニガワトビケラ属の一種 】―――――――
観察した環境:山地渓流 記録済みの地域:山形 幼虫の特徴:頭部前縁は弱く歪んでおり、右側が左側よりわずかに大きく膨らむ。よく似た別種がいるため種名の断定は避けた。 季節性・化性:春に羽化/1年1化と推測されるが詳細不明

齢不詳/雌雄不明
2025.03.20 宮城県
【ヒメタニガワトビケラ
属の一種】
観察した環境:染み出し 観察した地域:宮城 幼虫の特徴:頭部前縁は変形しない。種レベルまで 同定できていないため詳細は割愛。 季節性・化性:(種レベルまで同定できていないため割愛)

齢不詳/雌雄不明
2024.12.02 宮城県

齢不詳/雌雄不明
2024.11.24 宮城県
観察メモ
・体表にはつやがあり、個体差はありますが腹部には透明感があります。ほとんど
の種類が薄黄色を帯びた白い腹部をもちますが、内臓が透けて節間や正中線が褐
色~黒く見える個体が多いです。
・普段は礫間の巣の中に隠れているため、自由水中に入れると落ち着きなく動き回
ります。
・前脚基部の突起の形状・大きさや頭部前縁の形態・大顎の詳細な形態等を精査す
ることで属・種レベルまで同定が可能なものもありますが、成虫のみで記載され
ている種や幼・成虫の対応が明らかでない種もいるため同定は難しいです。
――――――【 ヒメタニガワトビケラ属の一種 】――――――
(旧タニガワトビケラ属DC:既知の不明種)
観察した環境:細流 記録済みの地域:宮城 幼虫の特徴:頭部前縁はU字に陥入する 季節性・化性:春に羽化/1年1化と推測されるが詳細不明


なめらかで左右対称
↓
細かく波打っており、
左側が小さく突出する
↓

中央が大きくU字にくぼむ
↓
ミミタニガワトビケラ
(液浸標本)
タニガワトビケラ
(またはその近縁種/液浸標本)
ヒメタニガワトビケラ属の一種
(旧タニガワトビケラ属DC/液浸標本)
頭部前縁の形状はルーペや顕微鏡がないとはっきりと観察できません。
かつてタニガワトビケラ属DA・DB…DDと仮記号で整理されていた5種に関しては頭部前縁の形態がすべて違っているため種同定が可能でしたが、
その後に成虫で複数の種が記載され、なかには幼虫形態が不明の種も存在するため、2026年現在はこの形質は決定的な種同定のキーとはなりません。
ただし、以下に紹介する大顎の形とあわせてある程度は同定形質として使用できます。



サキボソタニガワトビケラ大顎
ミミタニガワトビケラ大顎(左)
コンマタニガワトビケラ大顎
左右非対称の形の大顎をもつ昆虫と言えばヨツボシケシキスイの成虫が有名ですが、カワトビケラの各種もいびつな形状の不思議な大顎を持っています。
種によって内歯の配置や左右対称性が異なっており、種同定のキーとなります。ただし幼虫の液浸標本は顎を閉じた状態で固定されることが多い
ため、観察の際には顎を破損しないようにうまく開く必要があり、コツをつかむまで練習が必要です。